スタートトゥデイ社が運営するファッションECモール ゾゾタウン (ZOZOTOWN) は、11月1日より、商品購入の配送料無料とポイント10%還元を持続的に実施する旨の案内を出しています。
これらの施策に対して、以下のブログにある「有識者」の意見では一様に、配送料無料には賛成、しかし、ポイント10%還元には反対、となっています。
- スタートトゥデイ社への提言 – プロフェッサー小島健輔の言いたい放題
- ZOZOゾゾタウンの配送料無料、ポイント10%還元 – ファッション流通ブログde業界関心事
これらで指摘されている内容を引用させていただくと、
広告宣伝費を抑制して配送料の完全無料化に踏み切ったのは評価できる
と、前述の通り、配送料無料化については肯定的です。
この動きについては競合と見られるアマゾンをリマインドさせられますが、アマゾンのようなウェブのプラットフォーマーの一番の競合はリアル店舗になります。リアル店舗に対するECの一番のディスアドバンテージが、すぐに手に入らないことであることを考えると、ゾゾタウンが自社物流センターZOZOBASEにて地味ではあるけれども重要なフルフィルメントの持続的改善を続け配送料無料の施策を続けていくことは理にかなっています (リアル店舗との摩擦については後述します)。究極には当日配達・翌日配達までオペレーションを詰めていくということでしょう。
次に、ポイント10%還元についてですが、以下指摘されている内容を引用させていただきますが、否定的な見方になっています。
ポイント還元率10%への引き上げはコストと販売手数料率の高止まりを招く
ブランドのリアル店舗よりもウェブの方が常時お得に買えることで、リアル店舗を脅かす存在になっている
競合する駅ビルなどのカード値引き乱発を招き価格信頼感を損ないかねない
タイムリーに在庫を融通し合えてリアル店舗に限りなく近いオペレーションができるゾゾタウンは競合他社に対する優位性を持っているが、ブランドのリアル店舗を脅かすようになれば、ブランド側が今後在庫提供に対して消極的になる可能性がでる
特に、ブランドのリアル店舗への影響について心配しているようです。アパレル業界に詳しければ詳しいほど、「価格」と「リアル店舗」という2つのタブーへの影響が大きいことを懸念する声が聞こえます。今回のポイント施策はある意味、実力を持ったプラットフォームによる横暴にも見えなくは無いわけですが、そこにはスタートトゥデイ社による確固たる意思表示があります。
つまり、同社は、今回の2つの施策で、”ブランドのリアル店舗で買うよりもゾゾタウンで買った方が、よりお得で配送料も無いですよ” と公言したことになります。
ダウンサイドのリスクとしては、上記の通り、ブランド自体またブランドのリアル店舗との連携が疎かになることが考えられますが、ユーザーがゾゾタウンを支持するのであれば、ブランドはそこに協力せざるを得ません。
リアル店舗が価格競争に巻き込まれるのでゾゾタウンから撤退します、もしくは協力の度合いを下げます、としたところで、ブランド自体の売上・利益の向上には結局マイナスになるだけです。
リアル店舗をショールーミング化させてもブランドはゾゾタウンに協力せざるを得ない、そのような段階に入ったことをスタートトゥデイ社は認識し、周到に今回の施策を練って来たのだと考えられます。