東京からマレーシアのジョホールバルに移住しました。先週より賃貸のコンドミニアムに移り生活を始めています。ジョホールバルは、マレー半島の最南端に位置するジョホール州の州都でマレーシアの都市です。都市の規模としては首都クアラルンプールに次いでマレーシアで二番目に人口が多く、Wikipediaでは人口133万人 (2010年の統計) となっています。
ジョホールバルでは、2006年より総投資額10兆円、計画人口300万人と言われるマレーシア・シンガポール両政府共同の大規模なイスカンダル・マレーシア開発計画が進められ、隣接しているシンガポールの好調な経済発展の影響もあり急速な発展を遂げています。
開発投資は、不動産、金融、教育、工場、レジャーと多岐にわたり、開発面積はシンガポールの約3倍になります。正直なところ大風呂敷の感は拭えませんが、マレーシアとシンガポール両国による一大プロジェクトであることは事実です。
開発計画はジョホール州の南端、まさにシンガポールとの国境沿いを中心に進められています
まだ住んで 1週間ほどではありますが、ジョホールバルの気候、交通、食、買い物、住居、治安、教育についての感想をまとめてみました。
気候
熱帯雨林気候で一年中夏です。平均最高気温は30〜33度、平均最低気温は21〜23度の間でしか気温が動きません。雨季乾季はあり、10、11月 〜 3、4月あたりまでが雨季、それ以外が乾季になりますが、ゲリラ豪雨のようなスコールは年中降ります。
雨季でも日中日差しはそれなりに強いのですが、曇りの時はそれほど気温は気になりません。朝晩などの比較的涼しい時はエアコン無しでも窓を開ければ風が通るので扇風機のみでも快適に過ごすことができます。ただし、網戸がないと蚊などが入ってくるため注意が必要です。
交通
ジョホールバルはマレーシア第二の都市とはいえ、地下鉄も無くマレー鉄道も市内の移動には適していないので、クルマでの移動が基本になります。外は基本的に年中暑くしっかりした歩道もあまり整備されていないこともあり、公共交通機関が発達しているシンガポールと比較して外を歩いている人をあまり見かけません。
だいたいどこのショッピングモールに行っても駐車場はクルマでいっぱいで、ピーク時にはインドネシアほどでは無いにしろ渋滞も発生します。アジアの都市をイメージすると、バイクやスクーターの大群を想像するかと思いますが、ジョホールバルはどちらかというとクルマで移動している人たちが多いです。ただ、相当古いクルマも多く頻繁にエンジントラブルで止まっているのを見ます。
現時点では、都市自体が徒歩で動くように考えられていないことや治安を考えた時に夜間の徒歩移動は危険ということもあり、ジョホールバルに住む場合は、クルマの所有かレンタルは必須だと思います。レンタルの場合、外資の有名レンタカー業者は高いのですが、現地の業者で小型車だと1,700リンギ (約54,000円) / 月ほど、半年以上などある程度長く乗ることで交渉もできるようです。
シンガポールへの移動は、主にクルマ (自家用車・タクシー) かバスになります。クルマの場合、乗ったまま出国・入国ができるので便利なのですが、国境の移動渋滞で出国から1時間以上かかる場合があります。バスは2.5リンギ (約80円) でシンガポール中心地まで行くことができ、出国から40分ほどで到着します。シンガポールからジョホールバルへ延長する地下鉄やクアラルンプールとシンガポールを90分で結ぶ高速鉄道の計画がありますが、完成は2020年頃とまだまだ先の話になります。
ジョホールバル イミグレーションへの通路、平日の出国・入国で長く並ぶことは今のところありません
食
日本と比較して新鮮な野菜や果物、肉が少ないと感じます。おそらく食品の買い物はジョホールバル内に数店舗あるイオンが適していると思いますが、日系とはいえ、そこまで日本食が充実しているというわけではありません。
ローカルショッピングモールのフードコートに行くと、ラクサ (東南アジアの麺料理) 1杯が約160円で食べられたりもしますが、魚介系のスープは味に生臭さがあったりします。中華、韓国、欧米系の目ぼしいレストランはありますが、日本よりも若干安いくらいなので現地では高級の部類に入り、あまり物価の違いによるお得感がありません。
イオンでも惣菜類の種類が日本ほどあるわけではないので、自炊か近くでローカルのレストランを探す必要があると思います。マレーシア料理はあまりバラエティ豊富では無いので、ハズレの少ないローカルの中華料理が良いかもしれません。また、今のところまだまともな日本食レストランは見つけられていません。
マレーシアはイスラム教国家のため、明らかに Halal foods ハラル食では無い豚肉は、ショッピングモールの食料品売場内でたいてい隔離されたスペースで売られており、会計もその場かハラル食以外の専用レジで行います。ただ、冷凍食品が多くあまり品質が良いというイメージがありません。モール内ではなく、専用のショップが近くにあると聞いていますので、今度はそこに行く予定です。
イオン内フードコート、ローカルのモールだと食べ残しが多く残っていますがイオンは比較的綺麗です
買い物
前述の通り、食品の買い物はイオンが適していますが、生活用品に関しては、他にイギリス系GMSのTESCO テスコやローカル (現在は香港資本) の giant ジャイアントというショッピングモールもあります。嗜好品であれば、シンガポールの中級 (ジョホールバルでは高級) ショピングモールに近いCITY SQUARE シティ・スクエアやKSL CITY Mallというショッピングモールとオフィスの複合施設でそれなりに良いものも売っています。米系のPremium Outlets (日本だと御殿場や佐野で展開) のJohor Premium Outlets ジョホールプレミアムアウトレットは週末や休日はシンガポール人でかなり混んでいると聞きます。
ドラッグストアだと、Watsons ワトソンズ や mannings マニングス guardian ガーディアン (2014年1月16日追記 : マレーシアでは、mannings マニングス ブランドではなく、guardian ガーディアン ブランドで展開しているため訂正しました) という香港系のお店もありますし、居住地区によりますが、道路沿いなどの区画に商業施設が 並んでいるショップロットにも探せば小綺麗なお店を見つけることができます。現在住んでいるMolek地区は、ショップロットやモールへのアクセスがクルマで数分〜20分程度と交通の便が非常に良く、生活に必要なものを現地で手に入れることにはそれほど困っていません。
ショッピングモールのクラスによって庶民向けはマレー人、中級以上は華人 (中国系マレーシア人もしくはシンガポール人) とユーザー層がはっきり別れます。日本人がある程度満足するような高級モールだと、平日ほとんどの客が華人で友人同士中国語で話しているので、マレーシアにいることを忘れてしまいます。スターバックスなどモール内のカフェでiPadを見ながら会話をしている華人もいます。物価の差があるので、シンガポールから週末に買い物に来る人たちがとても多くいます。
イオンはジョホールバルでは比較的高級な部類のショッピングモールです
旧正月前の時期はどこのモールも華人向けのイベントが目立ちます
イギリス系のTESCOは、食品ではイオンに劣るものの生活用品の品揃えは豊富です
住居
新しいコンドミニアムがどんどん建設されていて選択肢は多いと思います。立地や高層階・低層階によっても価格が違うのでなんとも言えませんが、賃貸だと月6〜10万円ほどで2ベッドルームの部屋が借りれると思います。ただ、新築の高級コンドミニアムはほとんど10万円以上になると思われ、一時期よりも円安になった影響もあり割高感があると思います。
購入する場合はなんとも言えませんが、既に日本円で買う場合のきわめて良い時期は過ぎているような気はします。2015年までに現在建築中のコンドミニアムが数多く竣工し、特に中国からの投資の場合、竣工後すぐに売却するケースが多いと聞きます。これで供給数が上がりそこに実需が追い付くかどうかが、今後一旦価格に調整が入るのか伸び続けるのかの試金石になりそうです。
現在住んでいるのはMolek地区というジョホールバルの中心地から少しだけ離れた場所で、開発が特に進んでいる地域では無いのですが、クルマがあれば、通勤・通学・買い物の不便はあまりありません。治安については後述しますが、比較的安全な地区とは聞きますが気を抜くのは危険でしょう。銀行や比較的高級な店舗の前にはたいていガードマンが立っています。
コンドミニアムは建設ラッシュ、新築のこの棟の隣にも既に次の棟が建設中です
小さな子供が居る場合は特に、プールがコンドミニアムのすぐ下にあるのは喜ばれます
部屋からの景色、遠くに小さくシンガポールが見えます
治安
治安に関しては、気にするときりがないのですが、少なくとも現地時点では、危険と感じたことは一度もありません。車上荒らしから強盗、誘拐までいろいろな噂はよく聞くのですが、それほど多発しているのであれば、直接被害にあった方々がもっと近くに多くいてもいいのではと不思議に思います。20年前にアメリカに住んでいた時には、周りに軽犯罪に巻き込まれた知り合いが多くいました。日本人会の犯罪に関する情報の影響が大きいというのもあると思います。
もちろん犯罪は確実に発生していて、ジョホールバルはマレーシアの都市としては一番治安が悪いと言われますし、シンガポールと比較すると治安の差は歴然です。古くからはシンガポール人を狙った犯罪もそうですが、投資を呼び込むことでマレーシア人の中でも貧富の差が広がるだろうし、現地から見たら裕福な外国人も多く滞在することで犯罪を誘発することにもなります。建設ラッシュということもありインドネシアなどからの労働者も多く、ローカルよりも貧しい外国人が入ってきているというのも治安の悪さの一つかもしれません。
ただ、おそらくですが、多発しているひったくりや車上荒らしなどの軽犯罪を避けるためには、服装の選択やバッグの持ち方、外を歩くときは周りに気を配り、移動にはクルマを使い夜の外出は控えるなど、ちょっとしたことで犯罪に合う確率を大きく減らすことができると思っています。日本で暮らすには全く無防備でもよいため、このような気の使い方は多少ストレスになることもあるとは思いますが、自分の身を守ることは意識しておく必要がありそうです。
「実際に住んでみて感じたジョホールバルの治安について」もご覧ください。
夜のショップロット (道路沿いなどにある屋外ショッピングモール) 周辺
教育
Marlborough College (マルボロカレッジ) という英系名門パブリックスクールのマレーシア校の誘致に成功したことで、イスカンダル開発の目玉の一つEduCity (教育都市) 計画に弾みがついた感があります。マルボロカレッジ以外にもアメリカやシンガポールなど外資のインターナショナルスクールも多くあり、アジア圏では教育への力の入れ具合はかなりのものと思います。
ただし、まだ進学実績も何も無くブランド名だけが先走っていることもあり、手放しに賞賛する状況ではないと思っています。教育に関しては、最終学歴に近いところにより多くの投資をする必要があると思いますが、幼稚園から小中高一貫で継続していくのが相当な金額になる場合 (マルボロカレッジだと、小学校入学前で年間約195万円から高校卒業手前には290万円 (学費のみ)、寄宿舎利用はさらに年間150万円ほど) 、相当金銭的に余裕がなければ大学進学前に息切れしてしまいます。
卒業後にイギリスの名門大学に優先して入れるような影響力などがマレーシア校にもあれば、それまでの投資が活きることになりますが、当然ですが手段が目的化することが無いように意識すべきかと思います。インターナショナルスクールは他にもいくつかあり、学費は一般的には上記の1/3ほどです。
日本のマスコミにも最近よく紹介される英系パブリック・スクールのMarlborough College Malaysia
ジョホールバルの発展には今後もシンガポールとの繋がりが欠かせません。経済圏としてどれだけ一緒になれるかが鍵です。シンガポールとジョホールバルを結ぶ地下鉄やクアラルンプールまで繋がる高速鉄道が開通し、イミグレーションももっと簡略化されることで現実味が増しますが、あと5年以上はかかるでしょう。マレーシアのことなので、計画が遅れれば10年近くかかるかもしれません。
それまでに期待に実需が追いつかなることや、シンガポール経済の不調などで調整が入ることはあると思います。ただ、東南アジア全体は確実に大きく成長していることを考えると、大きくは崩れず上昇傾向は続いていくと考えています。
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