先週Facebookコマース (以下f-commerce) は f(ail)-commerce (失敗コマース) か?、という趣旨の英文記事が多く流れました。ことの発端は2月17日のBloombergの記事 “Gamestop to J.C. Penney Shut Facebook Stores” でした。
JC PennyやNordstrom、GAP、Gamestopといった大手百貨店やアパレル、ゲームの大型小売りが Facebookページのページタブや Facebookアプリで運営していたFacebook内ストアを閉じたという内容です。そして、そこに火を注いだのが、リサーチ会社Forrester ResearchのアナリストMulpuru女史のコメントです。
彼女はf-commerceを
“ trying to sell stuff to people while they’re hanging out with their friends at the bar. ” (バーで友人と飲んでいる時にモノを売ろうとするようなこと)
と例えました。
ユーザーのショッピング体験が貧弱
Bloomberg以外の記事も含めいくつか指摘されている f-commerceに関すると思われるネガティブな反応を見ると、バナー広告が表示される、画面が狭い (ページタブでの表示だと幅520px)、ページロードが遅い、在庫状況表示や商品検索など自社ECと比較すると機能が少ないなど、要するにユーザーから見ると手を抜いていると思われる内容が多いのです。
特にページタブに商品を並べるパターンのストアは前時代的な機能のみの場合がほとんどで、自社ECサイトがある場合、そこでのショッピング体験を凌駕するものがないと、Facebookのタブでユーザーが商品を買うというのは難しいと思わざるを得ません。
以前のVenture Nowでのコラムで言っている通り、ECや小売りの基本を理解し、そしてユーザーのショッピング体験をどのようにデザインするかをしっかり考えなければ、f-commerceが上手くいかないことは当然と言えば当然です。
ユーザーが友人に知らせたくなる仕組みが弱い
Forbes の記事で f-commerceソリューションベンダー8thBridgeのGerten氏は、
” The best way to monetize social media is to empower people to promote products to their friends not for brands to spam you on Facebook. ” (ソーシャルメディアでの一番のマネタイズ方法は、企業によるスパムではなく、ユーザーが友人に商品を紹介し購買を促進することだ)
とコメントしています。
Facebook などのソーシャルメディアでは、ユーザーが企業の投稿に”いいね!”などのポジティブフィードバックをすると、それが友人へも流れて口コミを促進する、と理屈としてはありますが、実際に運用してみるとそんな甘くはありません。
もちろん、より訴求力の強い”シェア”ボタンを促進することなどである程度の規模は広がりますが、ユーザーが友人に知らせたくなる仕組みを考えて追加していかなくてはいけません。これはソーシャルメディアを扱う以上常に意識していなければならないことです。商品画像の下に”いいね!”ボタンを置くだけではほとんど意味が無いのです。
Facebookページのファンは死んでるユーザーか?
ユーザーのショッピング体験をしっかりデザインし、ユーザーが友人に商品を紹介する仕組みを加えたとしても、そもそも Facebookページのファンがノンアクティブであれば誰も来て買物はしてくれません。
あるテックスタートアップのブログでは、BrandGlueをソースとして、
“96% of the fans will never return back to the Facebook Page after they have liked it.” (ファンの96%は、いいね!ボタンをクリックした後、そのFacebookページに再び戻ることは無い)
とありますが、これはどれだけ信憑性があるのでしょうか?
もちろんファンの集め方の上手下手にもよりますが、一概にすべてがこんなに悪い数字だとは思えません。しかし、
” the average % of Facebook Page visits per day is 0.7% per total fan count. ” (Facebookページの1日の平均訪問数はファン全体の0.7%)
は、そうだろうと感じます。
例えば、10万ファンがいたとして、1日のFacebokページへの訪問数 (ユニークユーザーでは無い) が 700、延べでみても月に21,000訪問。ページタブへの誘導やアプリのインストールなどを考えるとこの数はさらに減少するため、メールマガジン運用と比較したとして、明らかに薔薇色の数字とは言えないでしょう。
そして、懸賞などで無理矢理にファンを増やすだけだと、どんどん反応率が落ちて本当に96%のファンが二度と帰って来ないということはおおいに考えられます。
試行錯誤は続く
今後、Facebookのページ仕様変更やモバイル (スマートフォン) への移行など、状況は常に変わり続けていくかと思いますが、狭いタブページに商品を並べただけの f-commerceの手法はもう既に厳しいことは明らかです。
Facebookアプリとしてある程度カスタマイズしたEC (例: ASOS など) は、可能性はあると思いますが、本サイトのECと比較して同等以上のショッピング体験の提供が必要でありますし、ファンの誘導数を考えると、時間をかけて真摯にユーザーと双方向コミュニケーションを続けるしかありません。
そういう意味では、当初は自社ECへ誘導することを念頭に導線を考えた方が良いかもしれません。
最後に、一つ確かなのは
” Online shopping experiences are better when they’re social. ” (オンラインのショッピング体験はソーシャルの方が楽しい)
という概念です。ただし具現化するにはまだ時間がかかるでしょう。
出典 :
F-Commerce: Where Next for Retail on Facebook? – The Next Web
Why Are Retailers Shutting Their Facebook Stores? – Mashable
F(ail)-Commerce: Data Driven Look into Why Retailers Are Shutting Facebook Stores – Tim Chae
E-Commerce Experts Bustos & Gerten on F-Commerce – #Fail or Fan-tastic? – Social Commerce Today
F-Commerce Future: Bulls, Bears, Fans or Five Blind Men and an Elephant – Social Commerce Today
Facebook Shopping Apathy? Smart Plays On F-Commerce – Forbes
Gamestop to J.C. Penney Shut Facebook Stores – Bloomberg
本コラム記事は、以下の通り Venture Now に寄稿させていただきました。
「Facebookコマースは終わったのか?」