グローバル展開を進める米国のアパレル小売業者
日本と同様アメリカ国内でもアパレル市場は飽和し業績が頭打ちになっています。アパレル小売業はアジアへの進出をすすめており、日本でも Forever21、Abercrombie&Fitch、American Eagle Outfitters、GAP 傘下の OLD NAVY などアメリカンカジュアルの有力ブランドが相次いで上陸しています。そんな中、2009年に日本から撤退をした J.Crew がオンライン (Eコマース) としてのグローバル展開を促進しています。
J.Crew は前述の通り日本から撤退をしたのですが、その後マンハッタンのダウンタウンにあるメンズオンリーストアで独自の世界観を持ったインテリアや陳列スタイルで話題になるなど存在感を増しているブランドです。2012年3月よりグローバル販路を29ヶ国から107ヶ国に拡大し、41種類の通貨での取引が可能になりました。これにより、日本国内への配送や日本円での購入もできるようになりました。
イギリスのファッション系ECであるASOS や Amazon.com に買収された Shopbop など、海外配送に力を入れる小売業は多いのですが、J.Crew は元々カタログ通販からスタートしたこと考えると一日の長があるのではないでしょうか。
しかし、オンライン小売業がグローバル対応を進める際にはいくつかの高いハードルがあります。それらは、複数通貨によるプライシングから決済処理、送料の計算、通関処理、クレジットカード詐欺対策、発送にあたっての包括的なロジ スティックス体制の確立、オンライン上での在庫管理などなど枚挙にいとまがありません。このようなクロスボーダーECを裏方として支える機能として、J.Crew は FiftyOne という企業とパートナーシップを結んでいます。
隠れた成長企業 FiftyOne
FiftyOne は、J.Crew 以外にも、GAPグループ (Banana Republic や OLD NAVYなど)、Barneys New York、Williams Sonoma、Macy’s、Nordstrom、JCPenney、Neiman Marcus など、米国の錚々たる小売業プレイヤーを顧客に持つ隠れた優良企業です。
サイト内で消費者が本国 (米国) 以外の国を居住地に選んだり、米ドル以外の通貨を決済通貨として選択すると、FiftyOne のシステムが各サイトのバックエンドに連携します。以下はTechCrunchからの引用になります。
ユーザがチェックアウト時に見る注文の合計も、もちろん各国通貨で表示され、消費税や送料などもその国に合わせて正しく計算される。そのとき、正しい為替レートが使われる。通常のネットショップの場合と同じく、チェックアウト後は注文の確認が FiftyOne から各ユーザにメールされる。それには、注文番号、推定配送日、オンラインの荷物追跡システムのリンク、などが載っている。
FiftyOne の業績は急速に伸びており、ここ数年売上の前年比が200 〜 300%ほどの増加で推移しています。
矢野経済研究所によると、 日本国内のアパレル総小売市場規模は約9兆円ですが、市場は右肩下がり、小売業者はオンラインか海外のチャネルを開拓することが急務となっています。これまでは国内市場が大きいためリスクの高い海外展開のニーズは低かったのかもしれませんが、今後、FiftyOne のような機能と技術力を持つ企業が日本にも登場するのではないでしょうか。
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出典 :
eコマースの国際展開をすべて引き受けるFiftyOneがこのところ爆発的な成長 – TechCrunch
J.Crewが107カ国でEコマース開始 日本円で購入可能に – Fashionsnap.com